金明水・銀明水 -田丸-
むかし、織田信雄(のぶかつ)が田丸城へ入って左中将となり、田丸城築城に手を出しました。
「えっ、城のまわりを掘り割るのですか?」
「そうじゃ、すぐに農民を集めよ」
みけんにしわを寄せて、家来に命令しました。
「いいか、外城田川の流れをかえて、城下町を囲む外濠にするのじゃ」
と矢つぎばやに命令し、農民の声を聞こうともしません。
お城の外では、秋のとり入れが始まって忙しいというのに、たくさんの農民がかり出されようとしています。
しかし、それにさからう訳にもゆかず、朝早くから、くわを持った農民達が休む暇もなく働かされ、いく日もかかって大規模な工事が行われました。
ところが外濠を掘ったために水質がかわって、民家の井戸水が濁り、赤黒い水だけしか出なくなりました。「これでは飲み水にならない……」
人々は困ってしまいました。しかしどうすることもできません。
ところがある日、お城のぬけ穴を掘っていた人夫が、城内二の丸の南石垣下で不思議な水が湧き出てくるのを見付けました。
汲んでも汲んでも透明な水が溢れてきます。金明水・銀明水というこの水は神の水とされていました。
「これはすごい!」
このうわさは町中に伝わり、おかげで困っている人々には救いの水となりました。
やがて町かどの水槽に運ばれた神の水はみんなの飲み水となり、たいへん助かったということです。
この金明水・銀明水は、どんな旱魃(かんばつ)の時でもかれることなく湧き出てきたということで、茶人にはもっとも喜ばれたということです。
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