馬駆け神事 -野篠-
百年程むかしのことです。
「今年も豊作じゃのう」
「神さんのおかげや、ありがたいことや」
と村は毎年の豊作に、どの村人の顔にも笑いがとまらない様子です。
秋のとり入れが終わると、村のお宮さんでは、みのりを感謝してお祭りが行われます。神事(じんじ)といって、家では御馳走をつくり、農作業も休んで、村中お祭りをしました。
ところがある年のことです。天候が悪かったのか、さっぱりお米がとれなかったのです。村人達は暗い顔で、哀しみにくれました。
「今年はさっぱりじゃのう」
「来年はきっと豊作になる」
と翌年に望みを持っていましたが、翌年も大凶作で村人達はがっかりしました。村はますます暗い雰囲気につつまれました。
「わしらが頼りになるのは神さんだけや」
「なんとかいい方法はないものやろか」
村人達は真剣に考えました。
「八柱の神さんは気の荒い神さんていう」
「馬でも走らせて縁起をかついだらどうやろ」
と額にしわを寄せて村人が言い出しました。
村人達は、わらをもつかむ思いですから、それならと神事がおわったあと、大塚で馬駆け行事を行いました。
紅白の飾りをつけ、馬にまたがった若者は椎の木を折ってムチにし、馬を走らせました。
ひずめの音は遠く大日山のふもとまで響き、たてがみをなびかせ境内を三十三回まわった馬の姿に、村人達も歓声をあげ、それはそれは勇壮な行事となりました。
翌年の秋のことです。野篠の村からおやおや、こんな声が聞こえてきました。
「今年は大豊作じゃのう」と………
神社合祀後、この行事はなくなってしまいました。
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