夜泣き橋 -岩出-
むかしのことです。
稲刈りの作業から帰ってきた若い母親が、赤ん坊にお乳をふくませながら、こんなによくお乳を飲むのに、今夜も夜泣きに悩まされるのかしらと不安になっていました。
その夜、みんなが寝静まると
「オギャーオギャー」
顔をまっ赤にして泣き叫んできました。母親は、家族の者に気がねして赤ん坊を抱いて外へ出ました。
昼間、農作業が忙しくって赤ん坊の面倒をみてあげられないので、この子は夜になると私に甘えて泣くのかしらと、若い母親はいろいろなことを考えました。明日の仕事もあるし、早く眠りたい。おとなしく眠ってくれればいいのにと、泣き叫ぶわが子さえうらめしく思いました。
毎夜、夜泣きに悩まされた母親がある晩、赤ん坊を背負って、村のはずれの橋にくると、赤ん坊の泣き声がピタリとやんだのです。
「あっこれで眠れる」
とほっとした母親が、家へ帰ろうとすると、また泣き出すのです。母親も一緒になって泣きたい気持ちです。
…と、その時、暗やみの中から 「小豆を供えて、この橋のランカンを削って赤ん坊の寝床へひいてやりなさい」と言う神様のお告げがあったのです。母親はビックリして飛んで帰りました。
あくる晩のことです。泣き出した赤ん坊を背負って母親は、神様のお告げどうり小豆をお供えして、ランカンを削って赤ん坊の布団の下にひいて寝かせました。
すると、その夜から夜泣きが治ったのです。親子に笑顔がもどりました。うわさを聞いた母親逹も、子どもの夜泣きに悩まされると、この橋へ来て願かけをしたので、夜泣き橋と言われるようになりました。
また、この橋は小豆橋とも言われ、ランカンの木は、近くのお宮さんから採ってきた木とも言われています。
そして不思議なのは、毎年初午(はつうま)の頃になると獅子舞が舞ってきます。岩出の村を巡回して、この橋を渡って帰ろうとするとどうした訳か、獅子頭が割れたのです。それからは、獅子頭だけは山道を通って行くということです。
今は、コンクリートの橋になり、注意していないと通り過ぎていくような、小さな橋ですが、その橋のたもとの草むらに『夜泣白竜明神』と刻まれた碑が、ひっそりと祭られています。
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