榎木の獅子 -世古-
むかしむかしのことです。
ある年のこと、村ではやり病がおこりました。長雨が続き作物も取れなく、病にかかってもじっと寝ているだけでした。
そこで村では、悪病払いと豊作祈願をこめて獅子舞を舞うことにしました。
獅子には、暴れまわる雄(おす)獅子ときれいに舞う雌(めす)獅子があります。村では元気のよい雄獅子を舞うことにしました。
皆で獅子宿という当番を決め、獅子の舞う道順を相談したり獅子を取り扱う人、舞手などを決めました。
「二人が舞う二人立ち舞がいいのう」当日は大淀の浜まで行き、身を清めました。
その日、お寺でたくさんの人に囲まれて
「ホーボャ、ホーボャ」
と勇壮な姿で獅子舞を披露しました。
やがて獅子舞は、村中を舞い歩くことになりました。
ところがお寺の前の榎木にさしかかった時です。勢いよく舞っていた獅子が、そびえ立つ榎木にしがみついて離れなくなったのです。
「どうした、どうした…」
「獅子が離れんがのうー」
獅子は勢いあまって天に向かって登ろうとしたのです。
榎木は松や杉などのように、神の木とあがめられていましたから、村人達はこの木のできごとを神のしわざだと思い、かたずをのんで見守っていました。
天へ舞い上がりたかったのでしょうか。暴れまわった獅子は、やがて村中を舞って歩きましたが、それからはずっと獅子は榎木のところに来ると、しがみついて離れないので、そのつじのところを通らないようにしました。
こうして世古の獅子は榎木の獅子と言われるようになりました。
また、大根をお供えしそれを食べると、風邪をひかないという風習も伝えられ、1月15日には獅子舞は一軒一軒を舞って、威勢いのよい声が聞こえてきます。
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