爪描き地蔵 -長更-
むかし、大仏山(でいぶつやま)が深い深い山で木々がおい茂っていた頃のお話です
「山賊が出たぞー」
震えて走ってくる村人がいます。昨日も今日も、まる裸にさせられた村人が山から飛んできます。
「おっかねぇなー」
「こわくってあの山へはいけねぇ」と村人達は山賊の出てくる山へ仕事に行くのをためらうようになりました。
そんなある日、長更(ながふけ)の村に弘法大師さまが通りかかりました。
村人がそんなに困っているのなら、なんとか助けてあげたい。
しかし、山賊を退治するには一人の力ではどうすることもできないと、村人達と相談しました。なにしろ刀などの武器を持っていないので知恵比べです。
そうして、あたりが暗くなって山賊達が寝静まるのを待ちました。山賊達が寝ているほら穴から大きないびきが聞こえてくるのを確かめると
「ヨイショ、ヨイショ」
と大きな岩を運んできて、ふたをしてしまいました。山賊達はとうとう閉じ込められてしまったのです。
弘法さまは、悪いことをして、村人達を困らせた山賊でも、安らかに眠れるようにと、爪でその岩にお地蔵さまを刻んで供養されました。
そして再び旅に出られたのです。
それからは、長更の村人達が毎年9月18日になるとお参りするようになりました。
また、縁起物として、お地蔵さまの鼻をけずって持っていくので鼻がかけ、鼻かけ地蔵さんとも言われています。
このお地蔵さまは、西新村(にししんむら)へ行く山の斜面にまつられ、お線香と、新しいお花が供えられてありましたが、今は県の所有地になってしまいました。
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