勝軍地蔵 -岡村-
むかしむかしのことです。
明けても暮れても、いくさが続き、お城の中は緊張したおもむきに包まれていました。
「今度の戦いはどうじゃのう」
「もちろん、わしらが勝つさ」
胸を張って答えているものの、不安は隠せません。しかし、
「明朝出陣だ!」
という命令に、顔は引き締まりざわめいてきました。
家来たちもわしらの出番とばかりに活気がでてきました。
ところが、そのいくさも敵方にあっけなくやられ、胸を張っていた家来も、足を引きずって帰ってきました。
「くやしいのう」
「いや、今度は勝つ」
と家来たちはやられても一向に望みを捨てません。
そんないくさが何度も繰り返され、お城では焦りの色を濃くしてきました。
「どうしたら勝てるやろ」
とみんなで話し合いました。
「兵をもっと集めたらいい」
「刀をたくさん用意せよ」
「そうじゃ、お城の鬼門に地蔵さまをまつったらどうじゃ」
いくさに勝つことだけしか頭にないみんなは、とても良い考えだということで、お地蔵さまを彫ってもらうことにしました。
そしてお城の北東にあたる処は
「アタゴ山だ!」ということで、そこにお地蔵さんをまつったのです。
そのお地蔵さんを勝軍地蔵といい、その名のとおり、それからのいくさには勝利をあげることができました。
今は、岡村慈照寺(じしょうじ)境内にまつられ、土地の人々からは、『アタゴさん』と呼ばれています。
やさしい童顔のお地蔵さまは
「わしゃいくさは嫌いじゃ」
と言わんばかりに立ってみえます。
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