まいあがったはんこ -中角-
今から200年ほど前、江戸時代のことです。
このころ新しい作物が外国から伝えられるようになり、どんどん作られはじめました。
カボチャはカンボジアから、ジャガイモはジャガタラ(インドネシア)から入ってきました。
日でりでお米が穫れない年には、たいへん助かったということです。
「金太郎さんや、毎年精がでるのう」オボトケの畑で一生懸命畑を耕している金太郎さんに、通りかかった村人が声をかけました。
「明日は雨が降るといいのにのう」
金太郎さんは、種まきの手を止めて空を見上げました。
しかし、雲はひとつもなく雨は望めそうにもありません。
「どれ、もう少しがんばるか」
力いっぱい鍬を振り上げ、グイと土をおこしたところ、金太郎さんの着ているはんこが、フヮーと舞い上がったのです。
するとなにやら土の中からかたまりのようなものが出てきました。金太郎さんはドスーンとしりもちをつき、それを見ていた村人がかけつけてきて
「なんやなんや」
不思議そうに見ました。土のかたまりのように見えるけど、黒っぽくてなにやら重い。
「けったいなもんやのう」
と金太郎さんは家へ持って帰り、軒下に置いてそのままにしておきました。
翌日、金太郎さんが望んでいたように雨が降ってきて、軒下に置いてあった土のかたまりがきれいに洗われ、ピカピカと光り輝いているのです。
金太郎さんは、またびっくりしました。
「これは立派な仏像じゃのう」
手のひらにのる程の小さな仏像を目を丸くしてながめました。
右手を天に、左手を地に向け、満面に笑みを浮かべたおおらかなお顔。
金太郎さんは、さっそく田丸玄徳寺に持っていき、釈迦誕生仏であることがわかり、お寺で祀ってもらいました。
お釈迦様は今も、金太郎さんの生家で大切に祀られています。
当時のオボトケ畑は、ビニールハウスが建ち並び、すっかり昔の様子はなくなっていましたが、なんでもその昔、そこにはたいそう立派なお寺が建っていたそうです。
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