洪水から救った観音さま -曽根-
むかしむかしのお話です。くる日もくる日も晴天が続き、田んぼも畑もからからに渇いていました。このままでは、せっかく苦労して作った作物も枯れてしまうと、ある村人が宮川の河原へ水をくみに出かけました。
桶に水を入れていると、なにやら光り輝いているものが上流から流れてくるのです。
「なんやろ……」
村人はまばたきもせずみつめました。
拾い上げたのは立派な観音さまです。
「こりゃーえらいことや」
村人は桶を持つのも忘れて、飛んで帰りました。
村中、おおさわぎになりました。なにしろこんな立派な観音さまは見たこともなかったからです。口元に紅を塗って、やさしそうなお顔の観音さまにみとれるばかりです。
「おれが拾ろたんや」
村人は、鼻高々に言いました。
「ちゃんとまつらんとバチがあたるぞ」とみんなは観音さまを大切におまつりしました。
その年の秋のことです。ほしいときに降らなかった雨が、今度は抜けるように降り続き、嵐となってしまいましたこのままでは堤防がこわれるのではないかと、じっと座っていられません。
やがて、宮川からゴーゴーという大地を揺さ振るような地響きが聞こえてきました。
「おーい、こりゃぁ避難せな危ないぞ!」
声は、うわずっています。
村人達は自分達の命も大切ですが、家畜として飼っている牛も流されては、百姓に困ることがわかっているので、牛を避難させることにしました。
村人達は危険を承知で牛を連れ出し、お寺の観音さまの前に集めました。
「堤防が切れたぞー」
とうとう水は村までおし寄せてきました。苦労して作った作物も流され、もう自分達の命も、牛もだめだとあきらめようとした時、不思議なことがおこったのです。
まわりは水がおし寄せ、ドーという音とともに、家や木が流されていくのに、牛がいるところだけは水がつからなかったのです。
「観音さまが助けてくれたんや」
助かった牛をみて、村人達は観音様に感謝しました。
善楽寺境内の観音堂にまつられている十一面観音菩薩は、毎月18日、村の婦人会の皆さんが中心となっておまつりされているとのことです。
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