黄金塚 -宮古-
むかしむかしある年のことです。
「ザーザー」
2、3日前から降り続いた雨はやみそうにもなく、農家の床下は、もう水につかってしまいました。
「このままじゃ畳を上げやないかんぞ」
「山の木が折れとる音がする」
騒々しい夫婦の会話が聞こえてきます。雨はやみそうにもなく、とうとう床上まで水がつかってしまいました。
「カンカンカン」
村の半鐘の音がします。
夫婦は身の危険を感じて、とるものもとりあえず避難しました。
三日三晩降り続いた雨も、ようやく峠を越したのか小雨になってきました。
しかし、ひどい雨で床までつかった水はいっこうに引きそうにもありません。水が引けたら、折れた木とともに家まで流されていくのではないか、そうなれば村は全滅だとみんな心配しました。
まんじりともできない夜が続きました。と、この夫婦の夢枕に
「村がなくなって三軒になったら、お寺の裏の山を堀りなさい。金の鶏が埋めてある」
神さまのお告げがあったのです。
その朝、夫婦は不思議なことがあるものだと思っていました。徐々に水が引いて、荒れたものの村は流されずにすみ、もとの村によみがえっていきました。
よく年のお正月のことです。お寺の裏の山から
「コケコッコー」
という鶏の鳴き声が聞こえてきたのです。
「あそこは山が深うて誰も住んどらんのに、鶏の声がするとはおかしなことやのう」
「そやけど確かに聞いた」
村はたいへんなうわさになりました。
夫婦はあらしの時のことを想い出しました。あの時、村が三軒になったら、お寺の裏の山を掘れという神さまのおつげがあった。
しかし、村が三軒にならない内は、絶対に掘りおこすことはできないと、正直もののこの夫婦は、ずっと守り通してきたので、今だに金の鶏を掘ることはできません。
毎年お正月がくると、お寺の裏の山から鶏の鳴き声がが聞こえてくるということです。
いつしかここを黄金塚と言うようになりました。
金鶏(きんけい)伝説は、蚊野(かの)、勝田(かつた)、坂本(さかもと)など町内にもたくさんあります。
あえてとりあげたのは、そこに昔からの『ロマン』があるからです。
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