獅子塚 -下田辺-
今から250年程前、下田辺(しもたぬい)の村では大凶作と重い税で苦しんでいました。
それに追いうちをかけるように、はやり病がおこったのです。
「うちの子がえらい熱でのう」
「おらとこのもまっ赤な顔して苦しんどる」
村のあちこちで深刻な話が聞こえてきました。痘瘡(とうそう)というはやり病です。この病気はあっという間に感染して村のほとんどの人がかかってしまいました。田畑に出てくる人もなく、物音ひとつ聞こえない状態です。
暗い雰囲気の中で声をかけた若者がいました。
「悪魔払いに獅子舞をしよう」
この意見に反対する者は一人もいませんでした。さっそく、おす、めすの2匹の獅子頭をつけ、太鼓、笛にあわせて若者が一軒ずつ門廻し(かどまわし)を行い、はやり病がなくなるようにと舞ったのです。
すると獅子の勢いに恐れをなしたかのように、痘瘡病が逃げていきました。
その年はたくさんのお米が取れて、村中喜びあいました。若者達のおかげで村には活気がでてきました。
ところがある年のことです。
若者達が獅子を舞っていると、急に2匹の獅子が暴れ出したのです。
気の荒い神さまが乗りうつったかのように、どうしようもない程、暴れたのです。若者達は、目を丸くして驚くばかりです。言葉も出ません。
それはまるで、獅子がみんなの家の悪魔を呑込んで苦しんでいるように見えました。
若者達は、暴れている獅子が可哀相に思えました。みんなの苦しみを救って身代わりになってくれたのだと思ったからです。
「安らかにさせてあげよう」
みんなは稲干場に穴を掘って獅子を埋め、静かに眠らせてあげました。
そこに獅子塚という石碑が祀られていましたが、訪れたその日、稲干場は新しい工場ができるので、ブルドーザーが入り造成され、石碑は隅の方に移動されていました。
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